【書籍解説】人を動かす編①「盗人にも五分の理を認める」

最新更新日 2024年01月18日
執筆:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士 三好 貴大

※以下の記事は動画を文字起こしし、ChatGPTを使用して要約したものに加筆修正しています。
動画内容と若干異なる部分もありますので、合わせてご覧いただけますと幸いです。

こんにちは、大家さんのための賃貸経営塾運営者の三好貴大です。

今回は大家さんのための書籍解説「人を動かす編」ということで、第1回目のお話しをしていきます。
この「人を動かす」という本は、賃貸管理を行う上でとても重要な話ですし、不動産業全般に非常に有効なので、ぜひ皆さんに一度手に取って読んでいただきたいです。

この本には色々なエピソードが載っていて、解説がされています。
ノウハウ本とは違い、色々な歴史上の人や近しい時代の人のエピソードが書かれていて、具体的な例がたくさん書かれていることで、非常にイメージしやすく、共感できる内容が盛り込まれています。

そして、第1章の最初に出てくるのが、「盗人にも五分の理を認める」という言葉です。
今回は、この内容が、不動産業や賃貸管理業にどのように生かせるのか、共通している点について解説していきたいと思います。

どんな極悪人でも自分が正しいと思い込んでいる

この章の全般的な内容を一言でまとめると、「どんな極悪人でも自分が正しいと思い込んでいる」ということです。
過去の極悪人と呼ばれていた人たちの例が出てきますが、そういった人たちも自身の犯罪を「自分は正義のためにやっている」「仕方なくやっている」と思っています。
歴史書に出てくる極悪人でさえ、自分は正しいことをやっていると思い込んでいるということは、賃貸管理の場面で相手が悪く映る場面があると思いますが、そういった相手の方たちも自分が悪いと思っているわけではないということです。
相手方もその人なりの正義があり、自分は正しいことをやっていると思っているという前提に立って話をすることが大切です。

具体例:家賃滞納

例えば、賃貸経営でよくあるトラブルの一つが「家賃滞納」です。
家賃滞納が起きた時、大家側や管理会社側は契約上払うべきものを払わない相手を悪く見てしまうことがあります。

しかし、相手を悪人だと決めつけ、「契約に定められていることなのでちゃんと守れ」と強く言ってしまうのは最悪のパターンです。
このような発言は、借り主にとって受け入れがたいもので、反発を招きやすいです。

実際に、強い言葉で家賃を督促することでトラブルが悪化し、法的措置が必要になることもあります。
相手が悪人だと決めつけた対応は失敗することが多いです。

家賃滞納が起きた時は、「相手がうっかり忘れてしまっただけ」「何か事情があって滞納してしまっただけ」と考え、相手に対して理解を示すような対応を心がけることが重要です。
例えば、滞納があった時はすぐに連絡し、状況を確認することから始めます。

うっかり忘れであればすぐに支払ってくれると思いますし、相手の滞納した事情を聞いた場合は、大家側と相談して、最大限相手の立場を考えた上で適切な対応を決定し、その結果を伝えることで、家賃滞納は大きなトラブルに発展せず解決することができます。

実際に私が管理を受けたお客様のケースで、ある滞納者は2年以上も家賃保証会社に代位弁済(立替払い)して溜まっては返済して、を繰り返していました。
電話に出ず、SMSも返信はありませんでしたが、郵便物はちゃんと見ていることがわかったので、私は手紙をポストに投函しました。

その手紙には、保証会社に代位弁済すると、立て替え払いの手数料が毎回かかること、滞納歴が将来の引っ越し時の足かせになること、状況を教えてくれれば協力したいという内容を書きました。
その4日後、滞納者から電話があり、話し合いを通じて今後の方針を決めました。結果として、4か月後には滞納がなくなり、やむを得ない事情があった際は前もって相談してくれるようになり、代位弁済することは無くなりました。
このように、相手への理解を示すことで結果が大きく変わります。

具体例:騒音トラブル

次の例は、上の階の足音や隣の部屋の声、大きなテレビの音などの「騒音トラブル」です。
騒音トラブルには、
①苦情を言っている人が神経質な場合(実際は許容範囲内の音を気にしすぎている)
②本当に騒音が発生している場合

の2がありますが、今回は後者を例にします。

騒音トラブルの対応で一番良くないのは、いきなり騒音の発生元に電話をして、「苦情が来ているので静かにしてください」と注意することです。
まずは騒音元に気づいてもらうようなきっかけを与えることが重要です。

では、対応方法のステップを解説します。

①投函文を入れる

騒音のトラブルが発生した時には、まず周囲の世帯や全世帯に投函文を入れます。
この文では、「思いのほか周りに音が響いている可能性があるので、配慮をお願いします」といった優しい内容にします。

これは騒音元への注意喚起という主旨ではありますが、苦情元へ「対応しています」とアピールすることで気持ちを落ち着かせる効果もあります。
これで解決に至れば良いですが、一度の投函では解決しないことも多いです。そういった場合には、再度周囲に配布することが必要です。

②再度、投函文を入れる

2回目の投函では、内容をもっと具体的にすると良いです。
例えば、「〇月〇日(〇曜日)〇時頃」と日時を特定し、「ピアノの音楽で歌っている声」「テレビの音」など物音の内容についても具体的に記します。
騒音が問題になるのは深夜帯が多いですが、具体的な日時と内容が記載されていると「やばい、自分達かも」と気付いてくれることが多いです。

良識のある方であれば、2回目の投函で問題が解決することが多いですが、それでも収まらない場合は直接連絡を取ります。

③直接連絡を取る

この際も非難するのではなく、問題の存在を伝え、相手に何か心当たりがないか尋ねる形を取ります。

例えば、「以前から深夜に歌声や大きな声が響いているそうなのですが、〇月〇日(〇曜日)〇時頃に歌っている声が響いていたようで、まずは状況を調査しているのですが、何か見聞きしていませんか?」と、あくまで状況を調査しているという態度で連絡します。
さすがに直接連絡が来ることで「やばい、これ以上はマズイな…」と解決することが多いです。

まとめ

賃料滞納や騒音トラブルを引き起こす人は、悪気を持って周りに迷惑をかけているわけではないことがほとんどです。
相手への理解を示すことで、問題の解決に繋がりますので、弁護士が介入するようなケースは、このような対応方法によって避けられます。

また、相手に理解を示すことによって、相手もこちら側への理解を示してくれるため、漏水トラブルや設備の不具合など、色々な場面で非常に有効です。

しかし、残念ながら全ての相手が理解を示すわけではありません。
私の感覚では、約95%の方が理解を示してくれますが、残りの5%は周りへの理解を示せない方もいます。
そういった場合には、別のトラブル対策やリスクヘッジの方法を取りながら、建物全体の良好な管理状態を保っていくことが大家さんや管理会社に求められます。

今回は大家さんのための書籍解説「人を動かす」編ということで、「盗人にも五分の理を認める」について解説しました。
ありがとうございました。

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